Web Advertising Bureau | Web広告研究会

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「企業BtoBサイトと企業BtoCサイト、各グランプリ受賞サイトの裏側を担当者が解説! 」2019年2月26日Webグランプリフォーラムレポート(1) イベント報告

  • 掲載日:2019年5月23日(木)

単なる人気投票ではなく、Web業務に携わっている人たちが「すばらしい」と評価するサイトはどんなものだろうか。そして、そうしたサイトを作り出した背景にはどんなストーリーがあり、Web担当者たちは何に苦労して進めたのだろうか。

Web広告研究会が2月26日(火)に開催した「Webグランプリフォーラム」では、第6回Webグランプリ 「企業グランプリ部門」を受賞した企業が、受賞サイトの目的や狙い、企画立案の経緯、公開後の結果と評価などについて明らかにした。

※Webグランプリ「企業グランプリ部門」は、企業Webサイトの担当者らが応募サイトを相互審査して選出する形式の賞。日本の企業Webサイトの健全な発展を目的とし、企業Webに携わる関係者の労と成果を表彰し讃える「Web関係者の、Web関係者による、Web関係者のための賞」として開催している。

2018年度のフォーラムでは、次の4部門でグランプリを受賞したサイトについて、担当者がサイトにかけた思いや経緯、そして成果などを解説した。

● コクヨ株式会社(企業B to Bサイト賞 グランプリ受賞)
● ブラザー工業株式会社(企業B to Cサイト賞 グランプリ受賞)
● 高崎市(プロモーションサイト賞 グランプリ受賞)
● 近畿大学(コーポレートサイト賞 グランプリ受賞)

前編ではまず、企業B to Bサイト賞 グランプリを受賞したコクヨ株式会社「コクヨの実験」と、企業B to Cサイト賞のグランプリを受賞したブラザー工業株式会社「日めくり絶滅危惧種」の裏側をそれぞれ紹介する。


■今までになかったオフィスチェアー、プロモーションも今までやらなかった施策に挑戦 「コクヨの実験」<オフィスチェアー「ing(イング)」製品サイト>(コクヨ)

●企業B to Bサイト賞 グランプリ受賞
「コクヨの実験」<オフィスチェアー「ing(イング)」製品サイト>(コクヨ株式会社)

http://www.jikken-ing.jp/


「コクヨの実験」担当社として登壇したのは、コクヨ株式会社の佐藤詠美氏。

「企業B to Bサイト賞」のグランプリを受賞したのは、オフィスチェアー「ing(イング)」のWebサイト。ingは、座面が前後左右に360°自由に動く椅子で、座りながら身体を動かせるという、従来にない発想で開発された製品。座りながら身体を動かすことで「筋肉の活動をサポートできる」「アイデアがわきやすくなる」といった効果があるとのこと。

2017年11月に発売したこの椅子だが、「事務用回転椅子」というカテゴリーで、新しい機能や座り心地をどうやって伝えていくのかさまざまな検討 をしたという。


<写真コクヨ株式会社 佐藤 詠美氏>

オフィス家具販売はB2Bビジネスであり、その販売は通常、営業マンが総務部に営業に行くか、販売店が行う。家具を利用するのはオフィスで働くワーカーだが、決裁をするのは総務担当者や経営者であり、ユーザーと決裁者が必ずしも一致しない業界だ。

しかしingでは、そうした慣習にとらわれるのではなく、 オフィスワーカーに向けたプロモーション という新しいチャレンジに挑んだ。

「B2B商材だが主ターゲットはB2P(パーソン)だと定義して、経営者や総務担当者はサブターゲットにしました。一般のワーカーに欲しいと思ってもらい、購買決定者に伝えてもらう、そんなしかけをつくりました」(佐藤氏)

そこで購買決定のプロセス(AISAS)をワーカー(B2P)と企業(B2B)に分けて整理し、ワーカーの認知を得るための施策を実施した。


<図:購買決定のプロセス(AISAS)をワーカー(B2P)と企業(B2B)に分けて整理した>


「A(Attention)」は「知る」フェーズとして、オフィス家具としては初めての記者発表を行い、さらに「椅子に座り過ぎ」という社会課題を解決する椅子として、プレスリリースを配信した。こうした施策の結果、テレビのニュースに多く取り上げられ、一般の認知を獲得できた。

「I(Interest)」は「座ってみる」フェーズとして、ingの実物に座れる場所をショールームではない形で用意した。メインは梅田と中目黒の蔦屋書店内に1ヶ月間設けた「座り場」。他にもワーカーが多くいるソニーパーク銀座、新宿三井ビルディングの共用ワークスペースなどでもイベントを実施し興味を喚起した。

「S(search)」のフェーズは認知の活動を補うものとして、Webに「製品サイト」と「コクヨの実験」の2つのサイトを用意した。
製品サイトは、総務担当者が購買検討で閲覧するサイトで、商品ラインナップなど、一般の製品サイトと同様に制作した。
「コクヨの実験」は、ワーカーが楽しめるように、ingとからめたゆるくておもしろいコンテンツを掲載した。


<図:総務担当者が購買検討のためにつかう「まじめな」製品サイトと、ワーカーが楽しんでingを知る「ゆるい」アレコレコンテンツ>


「一般のワーカーに製品サイトは見てもらいにくいが、おもしろいコンテンツならば見てもらえるという仮説をたてて、『ingとラクダはどっちが乗り心地がいいか』などの変わったコンテンツを制作しました。公開したら、FacebookやTwitterでシェアし、広告を配信しました」(佐藤氏)

しかし、広告を配信するとアクセス数は一時的に上がるものの、PVやUUが右肩上がりに伸びるというような結果にはならなかったという。また、記事内の座り場所情報やAmazonへのリンクのクリック数などを分析してみたところ、ゆるい記事よりも、むしろためになる記事のほうが高いことがわかりました。

こうしたことから「ワーカーの方たちがSNS上で盛り上がっていたとしても、その声が企業の総務に届くとは限らないのではないか」と判断した佐藤氏は、ワーカーの方たちが企業に働きかける「アンバサダー」になってもらうというアプローチに切り替えた。

「オフィスにingを無料で1ヶ月貸し出す『ingアンバサダー』という企画を考え、コクヨの実験サイト内で展開してみたところ、1ヶ月の応募期間で171社からの応募があり、反応が大きいなと感じました」(佐藤氏)

応募してくれた171社に関してきっかけとなった告知の手法を分析したところ、35%がラジオからの集客だった。ラジオでは、祝日昼間の3時間番組のスポンサーになり、120秒のCMを複数回放送したあと、何回かスポットCMを放送していた。


<図:ingアンバサダーへの応募で多かったのはラジオがきっかけの人>


「ラジオでCMが流れると検索されて、流入が増え応募につながりました。ラジオとWebは相性がよいと感じましたし、そのページのコンバージョン率(応募完了)は3.8%と良い数字がでたと思います。 応募された動機から、働き方に関心があり、よい仕事をしたいと考える人から応募があったことがわかりました。体験後に総務に声を届けてくれそうな人が集まったと感じます」(佐藤氏)

これらの施策から、 働き方の感度の高いワーカーに訴求していくことが効果的であるとわかった。そこから「コクヨの実験」の方向性も見直していき、「おもしろい」コンテンツとしてバズる記事ではなくても「アンバサダーが1ヶ月間ingを使ってみた感想のレポート記事」なども進めていった。

佐藤氏は「おもしろコンテンツはSNSでシェアされるが、ターゲットのワーカーには届きにくく購入にはつながらないことがわかりました。働き方の感度の高いワーカーに読んでもらえるようなコンテンツにチューニングしていきたい」と締めくくった。

 

■毎日見てもらえる日めくりコンテンツで、環境活動への理解を深める
日めくり絶滅危惧種(ブラザー工業)


●企業B to Cサイト賞 グランプリ受賞
日めくり絶滅危惧種(ブラザー工業株式会社)

https://www.brotherearth.com/ja/special/calendar/



「企業B to Cサイト賞」のグランプリを受賞したのは、ブラザー工業の「日めくり絶滅危惧種」。同社の環境貢献活動である「Brother Earth」のスペシャルコンテンツで、絶滅危惧種を日めくりで一日一種ずつ紹介するものだ。ブラザー工業の岩田 俊夫氏と制作会社アクアリングの佐藤 直樹氏が登壇した。


<写真:ブラザー工業株式会社 岩田 俊夫氏>


ブラザー工業では、「Brother Earth」のスローガンのもと環境維持、保全活動を行っている。これまでも特に若い世代に環境への取り組みを理解してもらうために、プラネタリウムのライツパートナー、宇宙兄弟とのタイアップ、イベント開催などを行ってきた。

「通勤・通学で気軽に毎日見られる『日めくり絶滅危惧種』をきっかけに、ブラザーの環境保全活動への取り組みなどを紹介するゴールコンテンツへの流入を目指しました」(岩田氏)


<図:絶滅危惧種を日めくりで一日一種ずつ紹介する「日めくり絶滅危惧種」>


<図:CSR活動全体のなかでの「日めくり絶滅危惧種」の位置づけ>

「日めくり絶滅危惧種」の企画スターは、2017年11月にさかのぼる。コンテンツを毎日発信するというアプローチで、ユーザーとの濃いつながりをつくることを目指したという。12月に提案が決まり、1ヶ月で準備することになったため、最初からすべてのコンテンツを用意するのではなく、後追いで準備していった。水彩画のアイデアにたどり着くまでには、刺しゅうやドット絵、図鑑のようなデザインなど試行錯誤したという。



<写真:株式会社アクアリング 佐藤 直樹氏>


「すべてデジタルにするのではなく、動物の手書きイラストというアナログな表現をつかうことで、見ごたえのあるものになったと思います。見栄えだけでなく、コンテクストを大事にしていて、多様な生物が地球で生きていることを示すために、水彩画で命の彩りを、動物をつなぐ一本の線で生態系を表現しました。
表示する365の絶滅危惧種の選定にもこだわり、身近な生物で数もたくさんいるものを中心に選びました。デザイン面では、スクロールで画面が動いて情報が表示される、前の日付の生物とつながって表示されるといった表現にこだわり、その中のリンクの1つとしてクリック募金に誘導しました」(佐藤氏)


<図:ゴールデンハムスターのような、身近に感じられるのに絶滅危惧種である生物を中心に選定>

2018年1月から毎日更新し、2019年以降はアーカイブとして継続して掲載している。クリック募金にも反応があったという。オンラインだけでなく、日めくりのイラストを冊子で配布したり、学童保育の子どもたちに絶滅危惧種のトートバックを作るワークショップに招待したりするなどの地域貢献活動にも横展開している。


<写真:オンラインだけでなく、冊子やイベントにも横展開>

岩田氏は「ブラザー工業では、環境の取り組みを真剣にやっています。広報部は入り口を低くして、より多くの人に我々の活動を届けていくのが役割です。今年も見た人を驚かせるような企画を考えていきたいです」と締めくくった。
 

2019年2月26日Webグランプリフォーラムレポート(2)
 

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